Big Dipper

人生は長い航海のようなもの。穏やかに・幸せに過ごすためのtipsを綴る。

キーホルダーの想い出

 学生時代、大学付近の喫茶店でアルバイトをしていた。来店したお客さんの注文を聞いたり、食事や飲み物を出したりしていた。この喫茶店には常連さんがたくさんいたが、その中には喫茶店の隣に住んでいるおばあちゃんもいた。いつもカウンターに一人座り、マスターに話かけていた。

 ちなみにここは住みやすい大きな街。高級住宅も多い。このおばあちゃんはここにある大きな家に一人で住んでいた。昔からお家柄もよく大変なお金持ちだったようだ。しかし当時は、親しい身内も友人もいないとのことだった。喫茶店に行くのはひとつの楽しみだったのではないかと思う。

 ある時、喫茶店に来られたおばあちゃんにいつものように挨拶すると、おばあちゃんはポケットからキーホルダーを出し、「いつも笑顔で挨拶してくれるから」と言って私に渡し、喫茶店を出て行った。そのようなことは初めてだったので私は驚いた。

 後で知ったのだが、それはよく知られたブランドのものであった。デザインも手触りもよいため長年愛用させてもらっている。もうそのアルバイトはやめてしまったが、元気だろうかとふとした時にこのおばあちゃんのことを思い出す。